女性の正常な腟内では、乳酸桿菌が存在し、腟内を酸性に保ち、他の病原細菌が繁殖しないように防御されています。しかし、日常のストレス、複数のパートナーとの性交渉や、頻回の腟内洗浄などにより、この防御機構が崩れ、多種類の病原細菌が繁殖した状態が細菌性腟症です。

図1.正常 図2.中間群 図3.細菌性腟症
図1. 正常 図2. 中間群 図3. 細菌性腟症

図4.細菌性腟症の臨床症状

 この細菌性腟症の診断は、帯下(おりもの)の顕微鏡検査を行い、多数の乳酸桿菌を認めれば正常(図1)、乳酸桿菌が減少し、病原細菌との混合状態を中間群(図2)、多数の病原細菌を認める場合は細菌性腟症(図3)となります。細菌性腟症の症状は、その半分は無症状ですが、帯下の増加44%、下腹部痛34%、不正出血22%、他(図4)との報告※1があります。

 次に、この細菌性腟症の身体への影響を妊娠時と非妊娠時の場合にわけて説明します。

 妊娠時に細菌性腟症をもった妊婦は、全妊婦のおよそ18%という報告※2があります。また、細菌性腟症の妊婦は、正常妊婦に比べ、早産率が2.19倍高くなると言われております※3。この原因は、腟内の細菌が、子宮頸管を通り、子宮内に移行したことにより、子宮内膜、胎盤に細菌が感染し、炎症を起こすためと考えられています(図5)※4。 図5.上行感染の経路

 現在、世界中で、細菌性腟症の治療が早産予防に有効か否か検討されていますが、治療により早産が減少したという報告と、減少しないという報告があります。また、後期流産が減少したという報告では、妊娠初期に細菌性腟症を治療すれば、治療前1であった後期流産率が0.2倍に減少したとしています※5。日本でも早産減少の報告は、散見され(表1)、近年、妊婦健診における、細菌性腟症スクリーニング、治療導入という産科管理変更の必要性が指摘されています※6。 表1.日本における細菌性腟症治療前後の早産率の改善


 非妊娠時では、妊娠時同様に、子宮内に細菌が感染すると下腹部痛と発熱を起こし、子宮内膜炎、卵管炎、さらに進むと骨盤腹膜炎になることがあります。帯下の増加、下腹部痛、不正出血、外陰の違和感等の症状がある方は、早めの産婦人科受診をお勧めします。

治療の対象
 妊娠時では、より早期(12週前)の治療が有効で、中間群(雑菌が乳酸桿菌より多い場合)、細菌性腟症の妊婦は治療が必要です※7。非妊娠時では、有症状の患者が対象となります。


治療について
 妊娠12週未満では、メトロニダゾールの内服は、日本では禁忌となっており、腟錠治療のみとなります。


妊娠初期(12週前)
 病院で腟内洗浄後、メトロニダゾール腟錠(主成分として250mg)を1錠挿入後、翌日より、1日1回1錠をきれいに洗った手で5日間継続して腟深部に自分で挿入します(治療期間6日間)。 妊娠初期(12週前)


非妊娠時及び妊娠12週以降の妊婦
 病院で腟内洗浄後、メトロニダゾール腟錠(主成分として250mg)を1錠挿入後、この当日より、メトロニダゾール錠(内服)(主成分として250mg)1回1錠を1日2回(朝、夕)、または3回(朝、昼、夕)、5日間継続して服用します※8(治療期間5日間)。 非妊娠時及び妊娠12週以降の妊婦

注:メトロニダゾール内服はPID(骨盤腹膜炎)が疑われる場合は7日間投与が必要です。
産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2014では1日3錠分3、7日間または1日4錠分2、7日間が推奨されていますが、日本で一般的に使用されている投与量は1日2錠分2、5日間です。なお、妊娠時は2週間後に、治癒を確認します。非治癒の場合は、再治療します。非妊娠時は、症状の消失で経過観察となる場合があります。

参 考 文 献
※1 島野敏司、福中規功、西川 鑑、他:細菌性腟症の臨床.臨床婦人科産科 48:803-806, 1994
※2 Shimano S, Nishikawa A, Sonoda T, et al:Analysis of the prevalence of bacterial vaginosis and Chlamydia trachomatis infection in6083 pregnant women at a hospital in Otaru, Japan. J. Obstet. Gynaecol. Res. 30:230-236, 2004
※3 Leitich H, Bodner-Adler B, Brunbauer M, et al: Bacterial vaginosis as a risk factor for preterm delivery: a meta-analysis. Am J ObstetGynecol 189 : 139-147, 2003
※4 Romero R, Mazor M: Infection and preterm labor. Clin Obstet Gynecol 31: 553-584,1988
※5 Brocklehurst P, Gordon A, Heatley E et al.: Antibiotics for treating bacteria l vaginosis inpregnancy.Cochrane Database Syst Rev,Issue1 CD000262, 2013
※6 斉藤 滋:早産の予防(2)細菌性腟症:わが国の現状と対策.母子保険情報. 61:12-16, 2010
※7 島野敏司、島畑顕治、奥 きくお、他:周産期感染症ハンドブック、細菌性腟症. 産婦人科の実際 55:339-348, 2006
※8 Mikamo H, Kawazoe K, Izumi K, et al: Bacterial epidemiology and treatment of bacterial vaginosis.Chemotherapy. 42: 78-84, 1996